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2012.02.17 創作15
週に一度、佐伯捜査一課長は土曜日に早朝、一時間、個別に打ち合わせを持っていた。
その打ち合わせに、佐伯警部は鳥居を呼んだ。刑事は思惑で語ることをしない。事実を組み合わせて捜査を進める。そのことは、佐伯警部の戒めることであった。その結果、公式の会議では確証のあることしか討議しない。それを補う形で佐伯警部は個別な討議を行う。そこではある程度、想定を含んだ話も許される。
「私は」と、鳥居班長は話始めた。
「害者は人格者として伝わっています。まあ、私達の大伴像もそれと大差はありません。しかし、堀木さんの見解のうち、本人も気がついているかどうか疑問なのですが、面白い話をしてくれたのです」
堀木は多少、ためらっていたが、私的な話でも聴取者が拒めば公表はしないと謂う言葉に誘われて、あくまで「個人の妄想」と言うことでと前置きしてから話し出した。
「この店の人は気がついていたでしょうが、大伴さんは無類のイチゴ好きで、店に顔を出せば、必ずと言っていいほどそれを注文します。それは季節を問いません。私達は季節外れの果物は敬遠します。店長が仕入れが大変なあのが解ってますからね。何せこの店は良心的とはいえ、やはりはなりの高価なものであることはわかっていますからね。けれども、あの高級官僚は我々とは次元が違うのでしょうね。価格は関係ないのです」
堀木龍一は高級官僚ではなかったが、それでも大手商社の社員であった。潜在的に堀木は官僚に対するコンプレックスがあったに違いない。じっと大伴の所作を見つめていたのである。
「あの人はイチゴをホ~クでくちゃぐちゃに潰します。私達も子供の頃は遣っていましたが、成人するとはた目を気にするのか止めますよね」
そうなのである。子供の頃潰していたイチゴにミルクをかけ砂糖をまぶして食べた記憶はある。確かに成人してからは他人の目を気にしのかその行為はやらなくなる。
「力を入れ、なにやら思いを込めて一生懸命するのです。そして、そこに練乳をかけて美味しそうに食べるのです」
鳥居刑事はそれを聞いていて、堀木は大伴に対して、敵愾心とか嫉妬を感じていたのではないかと感じた。堀木はエリ~トとは言え、当時としては最高の就職先は官庁で、その頂点は大蔵省であったはずである。
「私もそうなんですが、蝶の収集というのは、心に耽美主義的志向があったように思います。独占欲とか非情な残虐性が根底にあったのですね。大伴さんがそうだとは思いませんが、私にはそうした潜在意識があったと思われます。それに気ずいたのは、映画「コレクタ~」を見てからです。あの主人公は蝶の美しさに憧れて蝶の収集を始めるのですが、そのうち美しい女にそれと同様の嗜好を感じ、女狩りをし始めると言う物語です」
勿論、スタッテックで体育会系の鳥居にはそんな映画を見たことはない。その当時は勧善懲悪の時代劇か英雄物語しか興味がなかった。後で、参考のためと思って、ビデオで確かめたのであるが、そこには鳥居の理解を超えた、主人公の耽美的なサディズムが描かれていた。
鳥居警部は堀木の考えは異次元の視点で理解は及ばなかった。勿論、堀木は単なる知的な戯れとして、語っているに過ぎないのであり、大伴個人をどうのこうの言う意味はないのであろう。自己分析から、単に非現実的な解釈をしたに過ぎないのだったと思われる。
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